ひとりサマーバケーションEP (4) 東京ドームシティ〜海
2008年05月24日

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 ひょんなこと、といってもどんなひょんがあったかは忘れたが、井ノ頭公園からはじめた夏の冒険。ついに、隅田川までの距離も、前回の「ひとりサマーバケーションEP (3) 永福中央公園〜江戸川公園」でひとけたキロメートルくらいに。飯田橋あたりまで歩いてきて、海までの距離もにわかに現実を帯びてきた。作中では冒険者はいれかわりたちかわり、今では8人。一方、私のほうは当然ひとり。そんなことにめげずに、ひたすら突き進む夏である。

 2007年8月の冒険であったが、なんとか一年すぎる前にまとめられそうでよかった。よーし次は、2004年6月にいったアメリカ旅行のことでもまとめるかっ!。。。ムリだな。。

文京区、千代田区

東京ドームシティ

 ウナさんが言いました。すげぇ・・・・・・ファンタジック。

 そう? カネコさんが言いました。

 人工の世界の、と僕が言いました。なんだか原始ですね。

 ゲンシ? とカネコさんが訊きました。

 原始人の、ゲンシ? とウナさんが訊きました。

 はい、と僕は答えました。

 なるほど。

 あ、それなら、納得。ファンタジックより、あたし納得。

 そう? ウナさんが言いました。

P285

東京ドームシティ

 あたりが、街が明るくなってくる。水道橋駅に近づくと見えてくる、東京ドームシティだ。

 かつて、後楽園遊園地、後楽園球場など、「後楽園」と名がつく施設があった場所である。後楽園球場といえば、ON世代を、V9世代の読売巨人軍を支えた球場であり、王貞治の世界記録を、長嶋茂雄の引退を観てきた球場でもあった。私も一度、東京ドームになる前に訪れたことがあるが、ドーム球場となったいまでは感じられないあの熱気は、なかなか忘れられない。そして、「後楽園遊園地で僕と握手っ」という言葉の行方はようとしてしれない。

 ネオンのような、色とりどりの光。いわれてみれば確かに幻想的ではなく、どことなく人の力によって造られた、うそのような明るさ。長距離歩いてきたせいもあるだろうか、春の夜の満開の桜や、冬の夜の雪のような、現実感のなさが漂う。

 本作の主人公たち8人は、おそらくこの東京ドームシティの1施設であるラクーアに宿泊する。おそらく、というのは「ラクーア」という明確な記述がないからだが、描写はラクーアそのものである。私はといえば、近くにビジネスホテルを探して夜を明かした。¥1,000余計に払ったことは、いうまでもない(という割にはいっているが)。

二日目の冒険

 午前七時のすこし前に、僕たちは<施設>から発ちました。あまり人けのない王国の敷地を通って、もういちどJRの水道橋の駅前に、でました。ふたたび川を見ました。神田川です。そうして、真剣に出発です。六人で、二日めの冒険です。

P301-302

二日目の冒険

 夜が明けると、東京ドームシティの明かりも消え、よくある東京の街中の風景となる。どうせここまできたのだからと、靖国神社だとか、千鳥ヶ淵だとか、武道館も見学してみた。このあたりの神田川ってのは、かつて一部が江戸城の外堀であったため、重要な建築物の近くを通っている。だけども、今回の旅の道程とはあまり関係ないのであった。

 ここで、井の頭公園から共に歩んできたへその女の人と、イギリス人さんとお別れ。きっと、井の頭公園のボートに乗ったことで押し付けられたベンテン様の嫉妬心は、水道橋までくれば、川の流れと肩こりと共に、水に流されることだろう。一通の手紙を残していったカップル。「拝啓」ではじまり、「あらあらかしこ」で終わるその手紙に、その内容に、これまでの旅程が詰まっていた。冒険者は、主人公、ウナさん、カネコさん、そしておじさんと広東さんと北京さんの6人となる。

御茶ノ水駅界隈

 それからも歩きます。御茶ノ水駅の界隈の神田川は、まだまだすごいです。地下鉄の丸ノ内線が一瞬だけ地上に出て、神田川に線路を架けています。赤い電車がその線路を渡って、神田川を横切るのを僕たちは見ました。

P309

御茶ノ水駅界隈

 御茶ノ水あたりでは、神田川はだいぶ下をとおるようになる。並走する中央・総武線が、川を挟んで向こう側に見える。神田川のほとりには緑も多く、なんとなく情緒あふれる風景。そこに突如として、現われる、川を渡る線路。こちらの地中から出てきて、向こうの地中に吸い込まれていく、赤い電車。東京メトロ丸ノ内線である。丸ノ内線は、神田川で地上に出るばかりか、四ッ谷駅でも地上にでるなど、たまに地上に顔をみせる、珍しい地下鉄なのだ。

 一瞬、川の上を走る「地下鉄」。この不思議な組み合わせもいとをかし。

アキバ越え

 「高架鉄道。山手線の」とウナさんが言います。

 「山手線ですね」と僕は答えます。

 「ああ。こうして、こうして、歩いて・・・・・・ほら。ガードを抜けて、おれたち、外側にでちゃうよ。都心そのもののシンボルみたいな山手線の円の、内側から外側に。でちゃう・・・・・・でちゃったね。」

 僕たちは越えました。山手線を。

 内側から外側へ。

 東京を、中心からもっと東へ。

  :

 「アキバ越えかぁ」とウナさんが言います。

P310-311

アキバ越え

 神田川は、秋葉原で山手線の外側へ。山手線といえば、いわずと知れたまるい環状線。まあるいミドリの何とやらである。その昔、朝ドラの「ちゅらさん」で、主人公の国仲涼子が始めて東京に、そして電車に乗るときのシーンが思い出される。駅の行き方をきいたエリィに対して「その駅は山手線だね」というおばちゃんに「どこ行きにのればいですか?」ときくんだけど、「だから山手線」と返される。このやり取りが、その環状線っぷりを物語っているのである。

 高田馬場でその円の内側に入る神田川は、途中で中央線と並走しつつ、秋葉原の駅付近でふたたび外側に。すっかり東京の中心を横切ったと感じる。

浅草橋

 それは<浅草橋>という名前でした。

 僕たちはその橋梁のたもとで、見ました。息を呑みました。

 神田川の両岸に、船が。

 つながれています。何艘も何艘も。天井が平らでつぶれたような印象の、そしてそこに屋根の付いた、屋形船というものが。上流にも、下流にも。何十艘も。

 壮観に。

P315

浅草橋

 浅草橋といえば、浅草橋ヤング洋品店。浅草橋ヤング洋品店といえばASAYAN。ASAYANといえば夢のオーディションバラエティ番組であった。リハウス少女や、男性デュオやら、入れ替わりの激しいアイドルグループやら排出した番組であったが、神田川とはあまり関係ない。ましてや、浅草橋ヤング洋品店のころにブレークしたルー大柴が再ブレークしていたり、中華料理人がわけのわからない対決をしていたことも今回の旅行とは無関係なのである。

 ふと浅草橋あたりの橋から、川を見渡すと、確かに屋形船が数多く停泊している。屋形船に乗ったことはないが、朝ドラの「こころ」のような雰囲気もあり、なんとも下町なにおいがしてきて、粋な感じ。

隅田川

 僕たちは<柳橋>の左岸側のたもとに、立っていました。六人で、並んで。正面を見ていました。神田川の、下流を。

 「左右にはわかれませんな」とおじさんが言いました。「右だけ、むかいます。そちらに、海があるようですから」

 え? とウナさんが言います。

 え? と僕も思います。そして声に出して、言います。

 「じゃあ、左のは― あ!」

 これ、正面の・・・・・・、とカネコさんが言います。・・・・・・もう一本の川だよ。それも大河。

 僕は気づきました。「隅田川」と言いました。

P317

柳橋

 浅草橋から少し歩くと柳橋が見えてくる。そして、その先は、神田川を飲み込む、大河が現われる。井の頭公園からはじまった神田川は、24.6kmの道程を経て、次の川に注ぎ、ついにその役目を終えることとなる。その大きな川は、隅田川。そう、春のウララのである。一瞬息を呑むほどの大きさ。毎朝、電車に乗ってこの川を通っているときは、格別何も思ったことはない。しかし、歩いてみると、その大きさを実感する。

 ここで、おじさん、北京さん、広東さんと別れることになる。彼らは、上流の浅草から水上バスに。そして、主人公、ウナさん、カネコさんは下流に、海にむかって歩き出す。

中央区

摩天楼

 「ねえ、あれ、摩天楼?」

 「たぶん。マンションかな」

 「あ。ウナさん、カネコさん―」

 「どした?」

 「ほら、隅田川が」

 「げ」

 「あれ、わかれてない?」

 「わかれています、カネコさん。隅田川が、二つに。摩天楼の建っている土地の、先っぽのところで」

P330

摩天楼

 再開発の進む月島、晴海。隅田川のテラスを海に向かって歩いていくと、現われるきれいなビル郡。隅田川が二手に別れ、月島を囲んでいる。川に挟まれ真ん中に浮かぶ島に立つ高層ビル群を見ると、なるほど確かにその光景はニューヨークのマンハッタンのようなイメージも浮かぶ。ふと下を見れば水上バスが走っていたりもするし、近くには築地市場やふるい長屋のような建物があったりもする。下町と都会が融合した、なんとも不思議な場所である。

 以前、月島にはもんじゃ焼きを食べに来たことがある。そのときにもんじゃ焼きを焼いてくれたアルバイトの子と盛り上がった(?)ことも懐かしい思い出だ。また、月島は、現在放送中の第78作目朝ドラ「瞳」の舞台であったり、最近テレビに出すぎだなぁと思う石田衣良の直木賞受賞作「4TEEN」の舞台であったりする。ひょっとしたら、月島はいろいろな意欲を掻き立てる場所なのかもしれない。

勝鬨橋

 隅田川に右岸にずっと整備されてつづいていた親水テラスが、途切れます。

 僕たちは築地市場の手前で、橋を渡ります。

 それは<勝鬨橋>です。

 隅田川の最後の、橋です。

 二つの隅田川の右の隅田川の、おしまいの。

P332

勝鬨橋

 日本最古の可動橋であり、隅田川最後の橋でもある勝鬨橋。タモリ倶楽部でその内部に潜入したり、現在放送中の第78作目朝ドラ「瞳」でたびたび登場したりと、最近ことに目にする機会が多い。その趣を目にすると、当時の日本人の技術の粋を集めたその可動橋の姿が、とてもりりしく優雅に見える。近くには築地市場があり、昔から東京の食を支えていたであろうその橋。立派である。

 以前、一度このあたりを回ったときは、特に何も考えずに渡った橋だったが、歴史を知ってから渡ると、また不思議な気持ちに駆られる。歴史を学ぶ意味なんて、昔はないと思っていたけど、こんなふとしたことで歴史を知る重みと楽しさを知るのもまた不思議だ。

 本物の海だね、とカネコさんが言いました。あの正面の、レインボーブリッジだものね。東京湾のシンボルの。ほら、あっちはお台場で。フジテレビの建物が、あんなにめだってて。ほら、こんな海のパノラマ、絵日記に描けちゃうね。ぴったりだ。

 ぴったりだ、とウナさんが言いました。暑いし、もう海辺の陽射で、潮の匂いはたっぷりするし。ほら、あれ、海の魚の影だろ? そこの、水中にあるの。もう、淡水魚じゃないんだろ? そうか、この埠頭・・・・・・この<月島ふ頭>って書かれてる、ここ、こっからさきは全部、本物の。

 海です、と僕は言いました。夏の海です。

P334

海

 ついにたどり着く、海。実はこの月島ふ頭からは、定義上は海なのだが、あまり壮観ではない。東京湾のかなり奥に位置しているこの場所からは、まだまだ人工物が、レインボーブリッジや、お台場が見えるのだ。それでも、水源から歩いてきた充実感と、晴れた空、青い海、キラキラの太陽をみれば、これからはじまるサマーバケーションが楽しみに思えてならなかっただろう、、本の登場人物たちは。最後まで歩いた主人公、ウナさん、カネコさんは。ふと見回せば、私はひとりで、ジャンケンをする相手もいない。二日目の冒険は曇り空ではじまったが、いつの間にか空はすっかり晴れ渡り、それもなんとも皮肉であった。

 そんなこんなで、どんなだか自分でも忘れたが、はじまった神田川から、海までの冒険は、これにて幕を閉じるのである。いつか、自分の大切な人と、同じ道程を巡りたい、、ものでもないかもしれない。それでも今回の冒険で得た楽しくちょっぴりさびしい思い出と、経験は、私の人生の中で光り輝いている。たぶん光り輝いている。光り輝いてるんじゃないかな。まちょっと覚悟はしておこう、といった具合である。


その他の参考情報

サマーバケーションEP関連記事

サマーバケーションEP
ASIN:4163257209:image:small#引用元引用元

 記事中の引用は、古川日出男著「サマーバケーションEP」からの引用であり、ページ数は引用元のページ数を表わしていますよ。

 記事は、あくまで私の文章が主、引用文が従となるよう配慮して執筆しています。問題がある場合はご連絡ください。

参考サイト

地図

東京超詳細地図 ポケット版
ASIN:4415301207:image:small#東京歩きのお供東京歩きのお供

 東京の道には詳しくなかったし、事前にどういう道を歩くかを調べたかったこともあって、地図を購入しようと思い立ち、さらに持ち歩こうとも思っていたので小さいやつ、ということで「東京超詳細地図 ポケット版」を選択。最近の地図って見やすくてよくできてるなぁ、と感心。方向オンチなおいらでも、きちんと、海までたどりつくことができたよ。


大体の距離、旅程

  • 神田川:24.6km
  • 隅田川:23:5km(神田川合流地点から海までは、約5〜6km)

たぶん、30km前後、歩いてます。ちなみに、旅行の思い出はプライスレス。何でもかんでも数字で表わせばいいと思ったら大間違いですよっ!


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コメント

極東 (2008年06月15日 20:44)

どうも、梅雨で髪の毛がうねるチミの仲間、極東です。

ついにこのシリーズも完結か…。
(まさか完結するとは。)
アメリカ旅行も期待してます!いやぁ楽しみだなぁ。

> ¥1,000余計に払ったことは、いうまでもない(という割にはいっているが)。

つまり、夢と希望が詰まったカードをお買い上げということですかな??
なんか引くわぁ…。

> ふと浅草橋あたりの橋から、川を見渡すと、確かに屋形船が数多く停泊している。

屋形船、一回乗ってみたいのですよ。
船で宴会だなんて、想像しただけで楽しいではないか。
まぁ、色んな意味で吐くことになると思うけども。

> 以前、月島にはもんじゃ焼きを食べに来たことがある。
> そのときにもんじゃ焼きを焼いてくれたアルバイトの子と盛り上がった(?)ことも懐かしい思い出だ。

盛り上がったと思っておけば、いい思い出になりますよね。えぇ。

> 以前、一度このあたりを回ったときは、特に何も考えずに渡った橋だったが、
> 歴史を知ってから渡ると、また不思議な気持ちに駆られる。

ふと「寒くて風の強い日に、勝鬨橋をダッシュした光景」が頭をよぎりましたが、気のせいでしょうか?

> ふと見回せば、私はひとりで、ジャンケンをする相手もいない。

ついに感動のラスト…のはずが、何この虚無感漂う最後は。
いいのかそれでっ。
歩き終えた後、とぼとぼと電車で帰るモコの図が容易に想像できてしまったではないか。

> いつか、自分の大切な人と、同じ道程を巡りたい、、ものでもないかもしれない。

まぁそんなことしたら、暑さと疲れで殺伐とすること請け合いですよ。

モコ (2008年06月18日 01:19)

どうも。もう梅雨の力で、アメリカの子供みたいな
クリクリ具合になっているキミの仲間、モコです。

終わらないものなんて、この世にないのですよ。。


>> ¥1,000余計に払ったことは、いうまでもない(という割にはいっているが)。
> つまり、夢と希望が詰まったカードをお買い上げということですかな??
> なんか引くわぁ…。

 まぁ、確実に未来は詰まっていなかったよ。。


> 屋形船、一回乗ってみたいのですよ。
> 船で宴会だなんて、想像しただけで楽しいではないか。
> まぁ、色んな意味で吐くことになると思うけども。

 いいねぇ、夏あたりやってみる??
 北海道旅行のフェリーを思い出すなぁ。。

 
>> 月島
> 盛り上がったと思っておけば、いい思い出になりますよね。えぇ。

 え、も、もりあがったじゃん、、たしか、、たぶん。。
 月島もまた行きたいねぇ。


>> 勝鬨橋
> ふと「寒くて風の強い日に、勝鬨橋をダッシュした光景」が頭をよぎりましたが、気のせいでしょうか?

 そのあと(その前?)、豊洲のららぽーとに行って
 コートを買ったのは、気のせいだと思いますよ。


>> 海
> ついに感動のラスト…のはずが、何この虚無感漂う最後は。
> いいのかそれでっ。
> 歩き終えた後、とぼとぼと電車で帰るモコの図が容易に想像できてしまったではないか。

 え!、、見てたの??
 らしい終わりかたでしょ。

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